No.11 キュリー・エンジン  
2000.8.1.掲載 '98年〜実施

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キュリー・エンジンとは?

 左の写真はスチール缶を利用したキュリー・エンジンです。スチール缶はゆっくりと時計方向に回転します。

 この回転力に物を動かすなどの仕事をさせる事も可能です。アルコールランプを熱源とする熱機関です。

 鉄などの強磁性体の温度を上げて行くと、ある温度(キュリー温度と呼ばれています)に達した時、磁性が無くなります。それを利用した熱機関なので、熱磁気エンジンと言えば良いでしょうか。「キュリー・エンジン」は私の考えた造語です。 

よく知られたキュリー・エンジン教材

おなじみ「ローソク・チンチン」という名で知られた簡単につくれる熱磁気エンジンです。
 鉄の針金をよじって、Yの字にし、回転できるように軸をつけます。Yの字が水平になるように支持して、近くに磁石を置くと、二又のどちらかの針がねが磁石に引かれ、安定になります。そこで、磁石と針がねの間にロウソクを立てて置きます。
 磁石に引きつけられた針金の一端は熱せられて、やがてキュリー温度(770℃)に達します。そうすると、強磁性が消えて、もう一方の針がねの端が引きつけられ位置が交代します。これを繰り返すので、Yの字の針がねは2つの安定な位置を往復する運動を行います。
 Yの根もと、よじった延長の部分にグラスをチンチンと叩かせることも出来ます。
ぶら下げたワッシャがガラスのコップをチンチンと叩きます。

磁石は普通のボタン磁石用のフェライト磁石(300Gていどかな)で充分動きます。
軸受けは#22の針がねをらせん状に巻いただけです。回転子の針がねは#26を使っていますがもう少し太くても、OK。

電熱器の太いニクロム線でやってみたら、上手く動きます。この場合、ニクロム線が赤くならない内に交代します。

実用キュリーエンジンの可能性
 
この効果を利用した実用の動力装置は聞いたことがありません。実用化すれば、内燃機関特有のいやな排ガスを出さずに済む動力源の一つとなるでしょう。また、キュリー温度の低い磁性体を使えば低温度差でも動作できますから、色々な活用が可能と思います。

回転型キュリー・エンジン

 円盤形の回転子を使ったキュリーエンジンを考えました。回転力を連続的に取り出すことが出来るはずです。

 強磁性体で出来た円盤の加熱部分は磁力を受けないので、図では時計まわりの回転力が生まれます。
 磁力の強い磁石であれば回転のトルクを大きくできるはずです。加熱位置に来た部分の温度上昇の速さが回転の速度を決めます。

作って見ました

 スチール缶の側面にハサミで細かい切れ目を入れ、開いて円盤状にしました。これで、表面積が大きくなり、加熱部分の温度上昇が速くなります。
 磁石はボタン磁石を使用しています。アルコールランプか実験用ガスバーナーを使うと、ゆっくりと1rpmていどの速度で回ります。
 ニッケル板で円盤をつくりました。ニッケルは鉄よりもキュリー温度が低く(358℃)、赤熱させなくても磁性が消えます。小さなアルコールランプを使って、10rpmでいどの回転数です。
 小さなローソクでも回ります。バーナーなどで強熱し過ぎると上手く回らなくなります。全体が過熱して、キュリー温度を越えてしまうからです。その場合、冷却部分にストローで息をかけて、強制空冷すると、回ります。
 磁石に被せたアルミホイルは、磁石の過熱を防ぐためです。

回転数を上げるには温度上昇と冷却のスピードを上げる必要があります。

キュリー・エンジンを動力として模型自動車を動かしたり、発電をさせたりすると、熱機関らしくなるでしょう。今後、進展があればupします。

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